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カミングアウトとは、それを強要する側の自己満では?

最近、昔の話を思い出すことが多々ある。かれこれ昔のことだが、家出ガールだったわたしは中学生のころから家に帰らず、年齢を誤魔化して色んなアルバイトをしていた。

家出するに至った理由はいろいろあるけど、とりあえず生活をしていくためには稼がないといけなかった。

住むところは友だちの家だったり、よく分からないホテルだったり、いま考えるとかなりのミニマリスト生活を送っていたと思う。

当時は普通の酒屋さんにコンパニオン、キャバクラなど、風俗や売春以外で稼いでいた。食事にタバコ、洋服代などは賄うことができたけど、いつの間にかこじれていた親との関係も元通りになっていたので、実家に帰ることになった。やはり実家は居心地がいい。とはいえいきなり仕事を辞めることはできなかったので、その年の年末くらいまで働いていたと思う。

当時、ヤングの相談役を担っているお姉さんがいた。偶然にもわたしの親とも知り合いで、何度か家族で食事もしたりした。

家出しているときもわたしのことを心配して連絡をしてくれたり、家に呼んでくれたりもした。そこに泊まることはなかったけど、そのお姉さんにはわたしと同年代の子どもがいたせいか、ヤングがよくたむろっていた。

実家に戻り、その年の12月31日。わたしが色んなところで働いていたことを知っていたお姉さんは、「年を越すにあたり、後悔のないよう、お母さんに仕事のこと話すんだよ」と言ってきた。強要するように、わたしにカミングアウトを求めてきたのだ。

そもそもそんなことを言って何になるのだろう。別にいまは関係性がマシになったのだから、わざわざ過去の話をする必要があるのだろうか。なんてことを考えていた。

とはいえ当時のケツの青かったわたしは、『たしかに言っといたほうがあとあとのことを考えるといいのかも』なんて思い、親に洗いざらい仕事のことを話すことになった。

親の反応は、かなり微妙でそれからというものの疑いの眼差しが強くなったことはいうまでもない。

親にカミングアウトしたことをお姉さんに話すと、なぜかわたしよりも、わたしの親よりも一番満足げな反応をしていた。

そのとき思ったのは、カミングアウトとはカミングアウトを強要する人の自己満足ではないのか?ということ。

勝手な妄想だが、お姉さんは「親子のわだかまりをほぐした」だとか「ひとりの少女の更生に一役買った」とか思っていたのかも。もちろん善意の上での強要だったのかもしれないが、それは果たして本当の善意と言えるのだろうか。

わたしはそう思わなかった。言いたくないことや掘り返したくない過去についてカミングアウトを強要して、誰がどうやって傷つくのか想像力が不足していると思う。

いまではそのお姉さんに対してとくに思うこともないが、カミングアウトはときに人の心を大きくえぐり返す可能性があることを分かっていない大人が少なからずいるのだ。

なにもわざわざ言う必要がないことを、あたかも「言わないと呪われる」ような言葉で強要するのは甚だおかしい話だと思う。

昔はなんだかんだ大人のいうことを聞いていた10代のわたしだったが、20代になって数年も経つと、そんなことに精神をすり減らす必要はないのだと考えるようになった。

あの時、お姉さんがわたしにカミングアウトを強要したことは、一種のお姉さんのバイマイセルフであり、大人のしてのあるべき謎の姿を押しつけていたのではないかと思う。

 

恨みも何もないけれど、思い出すとたまにもやっとする。大人のあるべき姿ってなんだよ。オナニーしとけばーか。